そういえば先日、ぎっくり腰で一人では歩けないという患者さんがいらっしゃいました。
いらっしゃる時には家族の肩を借りていらっしゃっていたのですが。。。
帰りは一人で歩いて帰って行きました(笑)
このように鍼灸がぎっくり腰や腰痛に劇的に効くというのは、体験談などで聞いたこともあると思います。
ただし、これには幾つかの条件があります。
まずはきちんと医師の診察を受けてレントゲンを撮り、骨に異常がない旨の診断を受けていることです。
基本的に骨に異常がなくてもお医者さんではなかなかこのぎっくり腰というのは対処できません。
理由は以前も書いたのですが、筋肉というのはレントゲンに写らないので、レントゲンに写らない、数値にも異常がないものは西洋医学では対処しづらいのです。
なので、鎮痛剤と筋弛緩剤を出されて安静に・・・というのが一般的です。
次に、ぎっくり腰を起こしてから2-3日は経過していること。
ぎっくり腰というのは筋肉の炎症が原因の場合が多いのですが、炎症というのは急性期を過ぎないと手の出しようがありません。(骨が原因のぎっくり腰もあります)
鍼灸というのは血流改善の目的でも鍼をするので、炎症が起きているところの血流が良くなると、炎症が悪化する場合があるためです。
もちろん、急性期の場合にはそれなりの鍼のやり方があるので、全く効かないというわけではないのですが、劇的に効くとなるとやはり急性期を過ぎていることが条件になります。
この急性期の時に大事なのは、とにかく幹部を冷やすということです。
それもぎっくりを起こしてからすぐに。
そして、この【冷やす】というのはガッツリと冷やすということです。
一番いいのは氷です。
袋に氷を入れほんの少しの水を入れます、コンビニのビニール袋みたいなものに氷を入れ、おちょこに1杯の水を入れる感じですね。
この水というのが大事で、氷をそのまま皮膚に当てると凍傷を起こす可能性があります。
そして、氷は溶けて水に変わる瞬間に熱吸収効率が最もよくなります。
なので、氷に少しだけ水を入れたものを腰に当て、20-30分は当てておくのです。
これを1日に数回行います、『アイシング』というのですが、このアイシングの目的は患部に血液を送らないために行います(他にも目的はあるのですが)。
そうして炎症部位の広がりをおさえ、数日すると急性期がおさまります。
その時に鍼をしたり、あっためたりするのが有効なんですね。
ちなみに、温シップや冷シップというのは温める効果も冷やす効果もありません。
皮膚に唐辛子を塗るとあったかく感じたり、ミントを塗ると冷たく感じるのと同じです、というか、あの温シップ冷シップにはそのままトウガラシ成分やハッカ成分が入っているので温覚や冷覚があるだけです。
体温は全く変わっていません。
鎮痛成分も最近の茶色い湿布に比べると全然少ないので、文字通り気休めにしかならないような気がします。
さて、この骨に異常がなく急性期を過ぎている状態で鍼をするとどうなるのでしょうか?
鍼は筋肉を緩めてくれる効果があり、そこに血液を送り込む効果があります。
血液が流れてくると発痛物質が流され栄養分も流れてくるので、その部位の異常を早急に治そうという働きが始まります。
筋肉が緩まないと血液は筋肉の中には流れてこないので緩ませた上で、鍼で筋肉に微細な傷をつけることでより多くの血液を患部に流そうということなんですね。
重いものを持って荷物を地面に置いたときに、腕に血が流れてくる感覚ってありますよね?
あれと同じです。
筋肉は収縮している状態では血液は流れないんです。
そして、筋肉は自分で緩む能力をあまり持っていません、何かしらで緩めてあげないと緩まないんです。
この筋肉の緩みと血流の促進という二つの効果が合わさると、一気に腰は良くなります。
実はこの二つの効果以外にもう一つキーワードがあります。
それは『鎮痛効果』。
鍼で刺したところにはごく軽い麻酔作用みたいな効果が現れます。
今まで痛かったものがふっと無くなることが多いのです。
これを利用して五十肩の治療なんかも行うのですが、痛みが和らぎます。
この「筋肉の弛緩」+「血流促進」+「鎮痛効果」=ぎっくり腰が劇的に良くなると言うことにつながるんです。
しかし、この鎮痛効果は長く続かないので、無理をするとすぐに逆戻りをします。
筋肉は収縮しやすい状態ですので、とにかく安静にして自己治癒効果がきちんと治してくれるまでは無理はしないようにするのがポイントです。
慢性的な腰痛にはまたいろんな要因が絡んでくるのですが、俗に言うぎっくり腰は鍼で効果の出やすいものであり、むしろファーストチョイスと言えるのではないでしょうか。